2019-09-12 05:28
正直期待外れだった? 廉価版ボルテコントローラー「SOUND VOLTEX CONSOLE -NEMSYS- Entry Model」詳細レビュー
ついに発売されたコナステ用の廉価版SDVX公式コントローラー。 はたして実用可能な出来だったのか? 他社製品との比較や本体内部構造等を含む詳細なレビューをお届けしよう。画像84点掲載!
プロジェクト中止の危機を超え、どうにかこの夏リリース
コナミのアーケードゲームをPCやスマホなど家庭で楽しむことができるサービス「コナステ(旧称e-AMUSEMENTクラウド)」。 「SOUND VOLTEX III(サウンドボルテックス III)」もそんなコナステに対応した人気音楽ゲームの1つ (コナステ版は以前はボルテクラウドと呼ばれていたが最近ではおうちボルテと呼ばれることが多い)だが、その専用コントローラーとして発売されたのが本商品「SOUND VOLTEX CONSOLE -NEMSYS- Entry Model」だ。
元々コナステ用のボルテコントローラーはサービス開始に合わせて「SOUND VOLTEX CONSOLE -NEMSYS- Ultimate Model(プレミアムモデル)」がリリースされているが、 今回リリースされた「Entry Model(エントリーモデル)」はその初心者向けの廉価版という位置付けで、 価格が37,584円→15,984円と半額以下に抑えられている。 昨年冬にBEMANIファクトリープロジェクトとして受注が開始され、 残念ながら期間内に製品化するための規定数には達しなかったものの、 ユーザーからの期待に応えるため、発売日を2019年春→夏に延期した上で追加注文を受け付けるという対応が行われ、なんとか製品化が決定した。
※受注生産のため現在は受付は終了済
その後はほとんど音沙汰がないような状態が続き、注文したユーザーからは 「一体どうなっているんだ?」「もう夏終わるんだけど……」といった声も聞かれたが、 お盆休みも終わって少し秋の気配が漂い始めたこの夏8月31日、ついにリリースされた(夏休みの宿題を最終日に終わらせました感)。
というわけで、おうちボルテユーザーのみんな!俺たちの夏はこれからだぜ!!
はい。では無駄な前置きはこの辺にして早速開封していこう。 箱には「精密機械・取扱注意」との注意書きやコナミのロゴ、そして本コントローラーの型番「BF009」等が記載されたシールが貼られている。 ちなみに、既に剥がしているがこの箱に直接伝票が張られて配達された。
こちらは購入特典の1つ、組立式筐体型スマホスタンド(ペーパークラフト)。 今回は組み立てないが正直、想像していたものよりかなり大きめ。 組み立て前の状態でA4サイズより一回り大きいダンボールのような素材の厚紙6枚。
このほか、もう1つの特典として購入者には2000円分のVOLTEX コナステ チケットがプレゼントされた。
こちらが取扱説明書。注意事項をよく読んで使用しよう。
アーケード版と同じボタン間隔を維持しつつ、小型・軽量化
そしてこれが本体だ!!
デザインは以前発売されたプレミアムモデルと同じで、 アーケード筐体をベースとしたものとなっているが、 サイズはコンパクトに、そして重さはかなり軽量化されている(5Kg→1.4Kg前後)。 一方でボタンやつまみの配置はアーケードと同じ間隔が維持されており、 この点は自宅とゲーセン両方でプレイするユーザーには嬉しい。
上部パネルはプレミアムモデルやその他社外品等ではアクリルパネルが使用されているが、 こちらのエントリーモデルでは厚めのシール(というかシート)が貼り付けられているようだ。
接地部分には衝撃吸収のためスポンジシート貼られているが、 本体がかなり軽量であるということもあり設置する台やプレイスタイルによっては位置ずれが起きてしまうので、 この点については下にゴムシートを敷くなど別途何らかの対策が必要そうだ。
価格(税込) | 15,984円 |
サイズ | 幅:44.3cm 奥行き:21.6cm 高さ:7.5cm |
重量 | 公式発表 2.0kg 当サイトによる計測 1.4kg(電池含まず) |
スイッチ | ラバーコンタクト(接点ゴム) |
ボタン・つまみの大きさ及び間隔 | アーケード版と同じ(STARTボタンのみ異なる) |
アナログデバイス構造 | 光学センサ |
アナログデバイス素材 | 樹脂成形 |
参考までにDAOコン SVSE5(社外品)との比較画像を掲載しておこう。 コナミ純正のプレミアムモデルも上のSVSE5とほぼ同サイズである。
横から見ると大きさの差は歴然! おそらく社外品を含めこれまで発売されたボルテコントローラーでは最小・最軽量だろう。
ボタンは基本的にアーケード版と同じサイズだが、 唯一このスタートボタンだけはかなり小さくコンパクトになってしまっている。 また、位置もアーケードど微妙に異なっているので、 ソフラン曲などでプレイ中にギアチェンする場合は要注意。 一瞬の間にピンポイントでこの15mm程度のボタンをホールドするのはなかなかに厳しい(しかも微妙に窪んだところにあるしよ……)。 まぁ、慣れればどうってことはないかな?
本体外観で一番目立つのがアナログデバイス(つまみ)部分だろう。 軽量化とコストカットのためか、素材がアルミではなくプラスチック製となっている。 この点はガッカリした人も多いのではないだろうか? アーケード版のようにオーディオ機材を操作しているような感じはなく、 なんだかカラカラコロコロしていてどうしてもおもちゃ感は拭いきれない。
ただ、実際のゲームプレイではかなり軽めではあるが意外にもそれほど操作感は悪くない。 ろくろ回しや指1本でクルクル回すような回し方はできない(ベアリングがないため軸がそこまでスムーズに回転しないこととプラスチックが滑りやすいため)が、 指2本でちゃんとつまんで回す分には問題はないし、慣れれば違和感もなくなりそうだ。 好みの問題もあるがアルプス801や803エンコーダを使用したSVSE5よりは個人的にやりやすいと感じた。
また何と言ってもやはり純正コントローラーなのでコナステ版ボルテに完全対応しているのが強みだ。 どういうことかと言うと、コナステ版ボルテは純正コントローラーの他にキーボードによるプレイにも対応しており、 社外品や自作コントローラーなどは基本的にキーボードとして認識させてプレイすることになるが、 その場合、ボタンの入力は問題ないのだが、 実はつまみに関してはキーボードとして認識されるコントローラーではアーケード版や公式コントローラーと完全に同じ動きにはならないのだ。 具体的には、キーボードの場合つまみを回した時の移動量が公式コントローラーに比べて少なくなってしまうのだ。 楽曲選択画面でもそうだし、もちろん楽曲プレイ時にもそうなる。 公式コントローラーだとつまみ持ち替え無し(半回転ほど)でレーンの右端から左端に移動できるのに対し、 キーボードとして認識されるコントローラーの場合はその半分程度しか移動できない。 実際のところ、ボルテのつまみは進行方法に少しでも動いてさえいればラインから外れることはないので 正確に操作してる限り問題はないのだが、一旦外れてしまうとリカバリはかなり厳しくなる。 適当にガチャガチャやって復旧、ということはまず無い。 そしてこの問題はキーボードとして認識させている限り、おそらくは回避は不可能だ (ただしこれは筆者所有の社外コントローラやマイコン、プログラムなどでの検証結果であって 既に解決されている可能性もあり)。 こうした社外コントローラーでのプレイは逆に正確につまみを操作する練習になると言えなくもないが、 やはり初心者向けには公式コントローラーでのプレイが爽快感もあってオススメかもしれない。 せっかくクリアできそうだったのにダブルレーザーを外してしまって復旧もできずに終了、……では悲しい。 それより、なんとなくガチャガチャやってたらクリアできた!の方が挑戦段階ではモチベ維持にもつながるからだ。
次にボタンを見ていこう。まずはBTボタン。アーケードと同じようなボタンだが、 廉価版ということで照光式ボタンではなくただのプラスチック製のボタンだ。 内部にマイクロスイッチではなくコンタクトラバーが採用されているため確かに静音性には優れている。 ただし、押した時の音は小さいが、押したボタンが戻ってくる時の跳ね返り音はそれなりにある。
実際にプレイしてみた感じとしては、一言でいうと、重い。
バネ + マイクロスイッチ方式の100g + 0.98Nはありそうだ。 アーケード版のSDVXやIIDXもデフォルトでは100gらしい(?)のでコナミに「これがうちの標準なんだよ!」と言われてしまえばそれまでだが、 インフレが進んで高難易度譜面が大量に追加されている現環境のボルテをこれでプレイするのはかなりキツそうだ。 一方で、初~中級者がレベル15位までの譜面をプレイする分には問題はなさそうでもある。
FXボタン。こちらはBTボタンと違って重さ的には問題なし。
本体左下には燦然と輝くKONMAI KONAMIロゴ! これが純正コントローラーの証よ。
底面には型式や消費電力等が記載されたシールが貼られている。Bluetooth接続機能が搭載されているため技適マークもここに表示されていた。
なお、底ブタはトルクスねじという六角星型ネジで固定されているため専用のトルクスドライバーでないと分解できないようになっている。
電池ボックスのフタはプラスドライバーで開閉可能。 電池は単三乾電池を3本使用。Bluetooth機能を使用しない場合は電池は不要だ。
本体左側面にはUSBケーブルの接続コネクタ、そしてBluetoothのON/OFFスイッチとパイロットランプが確認できる。 付属するUSBケーブルの長さは約2mだ。
本体内部画像 分解はくれぐれも自己責任で
では、ここからは本体を分解し内部構造を詳しく見ていくことにしよう。 ただその前に注意事項として「当サイトでは本コントローラーの分解・改造等は推奨しない」と明記しておこう。 本体を分解すると万が一の故障の際にコナミからの修理等サポートを受けられなくなるばかりでなく、 本商品はBluetooth機能を内蔵し技適マーク(技術基準適合証明)が付与された機器のため、 許可なく分解・改造して使用すると電波法違反に問われる可能性もあるからだ。 当サイトでは内部構造まで含めた詳細なレビューを掲載するために本機を分解しているが、分解後は基本的に本機は使用せず、 万一使用する場合もBluetooth機能をOFFにして使用し、 それでも問題があるとされた場合は本機のBluetooth関連パーツを全て取り外した上で使用するものとする。
つまみ(ノブ)は側面1ヶ所のみイモネジで固定されており、2mmの六角レンチで取り外し可能だ。 つまみのサイズは直径約30mm、高さが26.8mm。 プラスチックの材質がどうしても気に入らない場合は同等のサイズのつまみがあれば交換できるが、 アーケードの筐体やSVSE5に使用されているようなつば付のノブは当然ならが取り付け不可。 交換できるつまみの目安は直結30mmで高さが25mm~28mm、つば無しであること。
続いて本体の分解に進もう。底ブタはトルクスねじ8本で固定されており、外すと基板格納部が確認できる。 この段階ではまだボタンにはアクセスできない。
メイン基板のMCUには台湾PTC社のPT32C302が使用されている。ARM Cortex-M0を搭載した32bitマイコンのようだ。
こちらはアナログデバイス(ロータリーエンコーダ)とUSB&スイッチ部の基板。 回転を検出するセンサーには日本のomron社のフォト・マイクロセンサ(光センサ)が使用されている。
中ブタはトルクスドライバーではなく、普通のプラスドライバーで取り外し可能だ。
開けるとこんな感じ。
まだボタンには到達できない(フタを開けるとまたフタで、そのフタを開けるとまだフタで……w)。
基板を取り外して、やっとボタンを確認することができた。
STARTボタンやFXボタンにはそれぞれコンタクトラバー(接点ゴム)が1つのみ使用されているが、 BTボタンだけ1つのボタンにコンタクトラバーが4つ使用されている。
ボタンを軽量化する場合は基本的にはこのコンタクトラバーに手を加えることになるだろう。 4つあるゴムを2つに減らすか、あるいはゴムの一部をカット(肉抜き)して反発力を弱める等、 いずれにしても満足できる操作感になるまで何度か調整が必要になりそうだ。
ちなみにボタンの構造の違いと、そしてなにより本体内部にスペースがない関係でマイクロスイッチタイプのボタンに交換することはできない。
ちなみにボタン用の基板はこんな感じ。
BTボタンは4点のいずれか1点以上接触でONとなる配線パターンになっている。
BTボタンの形状詳細。
側面2ヶ所に跳ね返り時の衝撃を和らげるゴムがついている(画像の黒い部分)が、 正直、効果は無いよりはましな程度。
静音化する場合はボタン四隅の丸い出っ張り部分に、 スポンジシートやクッションシートなどをカットして貼り付けるのが効果的かもしれない。
FXボタンの形状詳細。
BTボタンと同じく側面2ヶ所にクッション用のゴムあり。 このボタンは音もそれほど大きくないことからこれ以上手を加える必要はなさそうだ。
BTボタンに使用されているのブルーのコンタクトラバーと、 FXボタンに使用されているグレーのコンタクトラバー。 大きさ及び形状はどちらも共通で直径約22.5mm、高さ約8mm、導電ゴム部の直結約5mm。 一見するとただの色違いににも見えるが、 ゴム硬度が明らかに異なりFX用のグレーのコンタクトラバーの方が2倍くらい(適当)重たい。 ボタンの軽量化でBT用コンタクトラバーの数を減らした場合、 余ったラバーをFXに使うことでそちらも軽量化することができるが、 逆にハマりやすくなる可能性もあるのであえてそれをやる必要はないかもしれない。
アナログデバイス(つまみ)の回転を検出するためのロータリーエンコーダこのような構造になっている。 上のつまみを回すことで本体内部の歯車が回転、光センサでその状態を読み取り(光を当ててそれが遮られるかどうかで判定)回転方向や回転量を検出する。
歯車の上下には本体との接触を防ぐためか、プラスティック製の円板というかワッシャーのような物が挟まれている。上に大1枚、下に小2枚。
このロータリーエンコーダーに関しては光センサを使用しているため非接触で接点不良もないことだし基本的には長寿命 (SVSE5等で使用されているアルプス801や803は使用を重ねると接点不良が発生するので交換が必要)。 心配なのは回しすぎて(あとは下手に改造して)軸になっている金属部分が抜けてしまったり、樹脂が割れてしまうことだったり? このへんは正直専門家でもなんでも無いのでよくわからないけど、 ともかく無茶な使い方をしなければ長く使えそうな構造にはなっているようだ。
初心者向けエントリーモデルとしては問題ない仕上がり 中~上級者向け実用は改造次第か
さて、ここまで詳しく各部を見てきたが、そろそろ結論に入ろう。 コナミが送り出した廉価版おうちボルテ用コントローラー「SOUND VOLTEX CONSOLE -NEMSYS- Entry Model」。 ネット上では「マジで期待外れだった」「流石コンマイクオリティだわ」といった声もみられたが、実際のところどうだったのか?
当サイトの結論としては、まずこれを機にボルテを始めようといった初心者向けとしては問題ないクオリティと判断する。 そもそも本機は廉価版のエントリーモデル(つまり初心者向け)である。 価格もアルティメットモデルの半額以下で、購入特典として付与された2000円のチケット分を差し引けば実質14000円程度(しかもペーパークラフト付き!)である。 また、受注が予定していた数量に達していないにもかかわらず製品化された商品であり、 数が少なければ当然製造コストがかかるわけで、それを考えれば十分な出来とは言えないだろうか? 実際にBTボタンの硬さはあるが、レベル15位までの譜面ならこのコントローラーでも問題なくプレイできる。 またつまみに関しては軽さなど好みの問題もあるがさすが純正コントローラーだけあって、 キーボードとして認識される非純正のコントローラーよりは圧倒的にプレイしやすい。 ただ、本コントローラーには「個体差が大きい」という情報もあるので、 ここで書いたことは筆者が入手した個体による当サイト独自の結論として、参考程度にとどめて欲しい。
次に、中~上級者向けの実用に堪えられるかどうか、という点についてだが、 これはやはりそのままで厳しいと言えそうだ。 レベル15以上の、特に鍵盤譜面になるとやはりBTボタンの硬さがネックになり、 プレイは可能ではあるが必要以上に体力を消費することになってしまうだろう(レベル19~の鍵盤譜面などはまさに地獄)。 ただ、改造次第では十分実用可能な状態にすることは可能だし、 そもそもそれなりにやりこんでいるボルテプレイヤーが 純正品にしろ社外品にしろコントローラーを買って全くそのままの状態で使用するというのも考えにくい。 各自の自己責任にはなるが静音化・軽量化等の改造をして使用するということになるだろう。
ボルテⅣへの対応や楽曲の大量追加など、大型アップデートによりにわかに盛り上がりを見せつつあるコナステ版SOUND VOLTEX。 今後はスマホやタブレット端末などでボルテをプレイできるULTIMATE MOBILE SERIESの配信も予定されており、 近日その詳細も発表されるだろう。 もちろん本コントローラーもモバイル版対応予定となっており、 その小型・軽量性を生かしていずれは自宅だけでなく外出先(学校で?w 会社で?ww)など、どこでもボルテができる未来が来るかもしれない……。 そして、それこそが本コントローラーの最大の利点となるのかもしれない。
というわけでボルテ先生の次回作にも期待しておこう!!(おわり)
次回は廉価版ボルテコントローラーの静音化&ボタンの軽量化等の改造方法(具体的な図解)について掲載予定。 また本記事の反響次第(需要次第)で、自宅SDVX環境構築、コントローラーの自作方法等、機会があれば掲載していく予定なので 興味がある人よければ今後もチェックしてみて欲しい。